米国で働く技術系サラリーマンがボヤく事業戦略

米国で働く技術系サラリーマンがコンピュータ・デバイスに関する事業戦略をボヤきます

プラットフォーム化 - スマホのレゴブロック化

次も初回の記事で言及した、「プラットフォーム化」。
これを「レゴブロック」と称することがあるのだが、ちょっと違う。
レゴブロックだと、なんでもどこにでもついてしまう。
「チャージャーをすべて5Vにして、microUSBの形状のプラグで充電できるようにしましょう」、これは「規格化」だ。

プラットフォーム化とは、ある複合物を構成しやすい、作りやすい複数の構成物に「分割するルール」を決めて、それぞれを規格・標準化することだ。
例えば、マイクロプロセッサと、その上で動作するソフトウェアのインタフェースを規定して、分割する。
Windows PCもアンドロイド・スマホもこれでできている。
ウェブ・ブラウザ上で動作するJava ScriptのAPIを規定して、いろいろなASPにアクセスできるようにする。
ウェブブラウザのプラットフォーム化だ。
LineのASPで提供するウェブAPIを規定して、その上でゲームやその他エンタメアプリが動作するようにする。
ASPのプラットフォーム化だ。
もちろん流行のバズワードクラウド」もクラウドAPIを規定することで、そのプラットフォーム化を進めているのだ。

さて、プラットフォーム化が進むと、何かを作るのが簡単になる。
先のスマホの例で挙げると、(1)各SOCベンダーがlinuxのベースポート(含むBSP)を提供し、(2)GoogleAndroid OS、SDK、NDK、標準アプリ、その他もろもろを提供(SOCベンダーはこのポートまでサポートする)、(3)部品メーカーが自社部品用のデバイスドライバを提供、(4)ISVがいろいろアプリを提供と、「分割のルール」に沿ってそれぞれの会社が部品を提供してくれるので、作るのが楽なのだ。
各セットOEMは「どんなデザインにしようかしら」「カメラは何にしようかしら」「ディスプレイはどれにしようかしら」と選べばよいのだ。
筆者が「金さえあれば、誰でもスマホ会社の社長」と揶揄する理由の一つはここにある。
Windows PCも全く同様だ。

さて、これをするとセットOEMは差別化が大変難しくなる。
何か差別化をしたくてもあくまで「分割のルール」内でしかできなくなるからだ。
一時期「Androidはカメラの露出補正をサポートしないので、そこを自社開発した」など話題になったところだ。
構成物の提供者(プラットフォームプロバイダー)は自社の売り上げを極大化したいから、誰にでも提供する。
「これはうちだけに使わせて」という内緒話など、最初のうちだけで、そのうち皆が同じになる。
それは部品メーカーも同じで、やれ有機ELだ、やれ裏面照射型カメラセンサーだ、やれ9軸センサーだ。
最初のうちは1-2OEMの独占だが、そのOEM自身が二社購買をしたがるがゆえに、すぐに技術の水準化が起こる。
すると部品メーカーのリーダーも、最初から複数のOEMと商売をするようになる。

失敗はしたがノキアが、成功しているAppleが自社プラットフォームに拘る所以はここにある。
差別化の源泉をプラットフォーム化させないことだ。
Appleは最初はOSだけだったが、すぐにアプリケーションプロセッサを内製化した。
そのほかの部品もほぼカスタムだ。
ノキアもベースバンドチップは内製、OSもほとんど内製だった。
思えばノキアが凋落しだしたのは、ベースバンドチップの開発チームをST Microsystemsに移管して、標準品チップを使いだしてからだ。
もっともこれは偶然の一致で、原因は他にあるのだ。

さて立ち返ってみると、iPhoneの凋落(おいおい)は差別化の源泉がOSや基幹部品に寄らなくなってきたためだ。
ノキアがベースバンドチップの内製をやめ、標準品を使いだした理由はそこにある。
さて、次の差別化要因はどこにあるのだろうかーこれはまた別の機会に。